1月13日(木)、5~6限の探究学習の時間を利用し、高校1年生が「デジタル・シティズンシップ」の授業を行いました。
これまでの情報教育は、トラブルを予防するために、ネットで起こった事件を取り上げ、「何がいけないのだろうか」「他人の気持ちを考えて行動しよう」と呼びかけながら、「やってはいけないこと」(禁止事項)について注意喚起を促してきました。もちろん、そうしたインプット重視の教育もネット上のトラブルを予防し、生徒が直面した問題を解決する一助となってきたことは事実です。
しかし、今日、世界では、デジタル時代のあらたな課題に対して、生徒、教師、保護者が同じ「市民」として、主体的に考え、「対話」を重ねること(アウトプットすること)を重視した教育が求められています。さまざまな立場や環境の人と交流し、多様性を認識した上で、最善の行動を選択すること。これによって、トラブルを自ら予防し、よりよい社会の実現に向け、課題の解決を図っていく実践力を身につけるための教育。それが「デジタル・シティズンシップ教育」です。
今回の授業では、※Common Sense Educationのレッスンプランを用いて、オンラインにおける自身、友人、家族の「レピュテーション(評判)」をいかに守るかという観点から授業を行いました。
「自分が投稿していない写真にタグ付けされた経験は?」
「勝手に人の写真をSNSに投稿した経験がある人は?」
「他人の投稿した写真や動画を、ネット上で共有することの長所と短所は?」
スマートフォンが体の一部のようになっている生徒たち。グループ内でさまざまな意見が交わされます。
「今、ネットに自分のことが投稿されるとして、どんな内容であれば、将来的に自分にとってプラスに働く? 逆にマイナスに働く内容は?」
なかなか具体的なイメージができないグループには、教員が「人生において大事な瞬間ってあるよね?」と問いかけます。
大学受験? 就職面接? 結婚?
そんな場面で相手に知ってほしいこと、知られたくないこと。
生徒たちの想像が広がります。
授業では、さらに4人の学生が起こした架空の事件を題材に、登場人物の言動や選択が事件にどんな影響を及ぼしたのか、また自分だったらどんな行動を取り、それが事件の結末をどのように変えることになるのかを話し合いました。
今後、生徒たちは多かれ少なかれ、SNSなどで情報発信に関わっていきます。だからこそ、授業の最後には、情報発信の実践者としての視点に立ち、自分がネットに書き込みをしたり画像を投稿したりする前に、自分にどんな「問いかけ」をするべきか考え、グループで共有しました。
授業の中で、教員が「こうしなさい」「こうしてはいけない」と教える場面はありませんでした。生徒たちは、自分の経験や意見を語り合い、自分や他人の「レピュテーション(評判)」を守るためにどう振る舞うべきかを考えました。もちろん、答えは1つではありません。生徒の数だけ答えはあります。そして、レッスンは教室だけでは終わりません。保護者の皆様とも、この問題を一緒に考えていただくために、家庭用のレッスンプリントも配信しました。家庭でも、子供たち、家族の「レピュテーション(評判)」を守るためにどうするべきか、「対話」が広がることを願っています。
※Common Sense Education
ハーバード大学大学院の Project Zero で研究され、アメリカで最初の「デジタル・シティズンシップ教育」カリキュラム。本教材は、動画、スライド、授業用資料等から構成され、幼児期~高校 3 年生までのデジタルライフで直面する課題と関心に焦点を当て、デジタルジレンマの視点から作成されている。