7月20日(土)、1学期の終業式・各表彰式が行われました。
表彰の後には、全国大会に出場予定の陸上競技部、ライフル射撃部の各選手への壮行会も行われ、柴田校長、生徒会長から激励の言葉が送られました。
柴田誠 高等学校長 挨拶(全文)
皆さん、おはようございます。今日で1学期を終了します。新しい友達との新しい生活を始めて4ヶ月が経ちました。友達と一緒に笑い合えたでしょうか。もし、できなかったならもっともっと人の気持ちに寄り添う必要があります。もっと大人になって下さい。人に優しくできなければ、エリートにはなれません。1年生は、何事にも一生懸命に取り組みなさい。2年生は後輩の面倒を見ながら一生懸命頑張りなさい。3年生は、後輩たちに背中を見せながら、新しい生活を始めて下さい。
今日は名古屋大学の伊丹 健一郎 教授を紹介したいと思います。国立研究開発法人 科学技術振興機構の戦略的創造事業として、ナノカーボンプロジェクトを進めてきた先生です。6月26日の英国科学誌「Nature」のオンライン速報版で研究成果が公開されました。日本のマスコミでも紹介されましたので、すでに知っている人もいると思います。
グラフェンナノリボンの精密合成に世界で初めて成功した人です。グラフェンとは炭素原子が結合してできた蜂の巣のような六角形格子構造のシート状の物質です。2004年に合成されてから、その優れた電荷移動性、熱伝導性、透明性、機械的強度、柔軟性などに注目され、基礎研究や半導体材料への応用研究が盛んに行われてきました。軽くて曲げられる半導体や、省電力の超集積CPU、小型で大容量の半導体メモリー、高周波デバイス、高感度センサーなど、非常に幅広い応用が期待されます。
特に、シリコン半導体を超える半導体特性に、世界中から期待されています。ちなみに、シリコン半導体のメーカーが集積しているサンフランシスコの南部一帯をシリコンバレーと呼んでいるのは有名ですね。この地域にはアップル、インテル、Google、Facebook、Yahoo!など大手の企業が集まっています。現在、半導体シェア1位を獲得しているのは米国で、52%を占めています。2位が韓国の27%、3位が日本の7%、欧州6%です。半導体の世界シェアをもっと上げるためにも、次世代炭素材料として期待されるグラフェンナノリボンの研究を進め、実用化してもらいたいですね。しかし、リボンは、その長さや幅、構造により電子物性が大きく変化してしまうのです。これまでのレーザーで切るような物理学的・化学的合成手法では、欠損が生じ、長さが制御できないなどの問題がありました。そこで、プロジェクトチームは、リビングAPEX(エイペックス)重合法と呼ばれる画期的な高分子化反応を開発することによって、長さ、幅、エッジ構造の全てを制御できるようになったのです。合成したのは幅1ナノメートル程度のグラフェンナノリボンで、触媒濃度を変えるだけで最長170ナノメートル程度まで長さを自由自在に制御できたのです。
ナノメートルは、1メートルの10億分の1と言ってもぴんと来ませんね。拡大して考えましょう。1ナノメー-トルを皆さんの手のひらの上に乗る1cmとすると、1mの長さが東京からイタリアまで届く10,000kmになる計算です。桁はずれの小ささですね。すごい技術です。
また、すでに大阪にある田岡化学工業株式会社と共同で量産化のための共同研究を行うことになっています。量産化の進展により、世界中の研究者によってさまざまな応用研究が一気に加速することが期待されます。半導体部門で世界シェアのトップに日本がなる可能性も否定できません。皆さんが生きていく21世紀は、まだまだたくさんの宝物が隠れています。是非皆さん自身の手で、発見して下さい。夏休み元気で過ごして下さい。9月に逞しくなった皆さんに会うのを楽しみにしています。